2020年初頭から始まったコロナ禍は、北海道の社会や経済にも極めて大きな打撃を与えました。他方で、コロナ禍はこれまで見過ごされてきたわが国の社会・経済活動の課題を浮き彫りにするとともに、コロナを契機にした様々な変化の可能性を私たちに示しました。
北海道経済同友会は、コロナを契機にした社会経済構造の変化をより良い未来を創造する機会として捉え、提言「コロナを超えたその先に-with/afterコロナの北海道の新たな挑戦-」を2021年3月に発表しました。そこでは、「コロナ後の新しい生活様式等に対応したビジネスモデルの再構築・創出」「北海道における食産業の体質強化」「本道観光の安定・持続・発展に向けて」「デジタルを活用した北海道の再興」の4点を提言しました。
当会では、この提言内容を更に深掘りし、地域活性化に資する報告を行うことを目指し、2021年11月に「北海道地域活性化委員会」を立ち上げました。同委員会では、北海道活性化のための産業強化については、北海道の基幹産業であり戦略産業である「食」と「観光」の価値を更に高めていくことが必要不可欠であると位置づけ、食と観光の目指すべき方向性―高付加価値化、サステナビリティの実践―を議論しました。
そのうえで、北海道の食・観光の将来像を実現するためには、その価値を創造できる「ヒトづくり」が急を要する重要な課題であることから、「ヒトづくり」に焦点を絞って議論を重ねてきました。現在、政府が進める「人への投資」は、「北海道の新たな可能性への挑戦」の後押しとなるという背景もあります。
こうした委員会の議論を踏まえて、北海道の「食・観光におけるヒトづくり」についてまとめたのが本報告書です。本報告書では、食・観光の目指すべき将来像とそれを実現するためのヒトづくりに関する基本的な方向性をまとめています。その際、道内外で食や観光のヒトづくりに取り組む様々な好事例も参考にしています。
本報告書が、道内の食や観光がさらなる高みを目指すための「ヒトづくり」を目指す当会会員および道内外の様々な関係者の取組みのヒントとなり、その活動の後押しとなれば幸いです。
そして、将来の北海道を支えるのは、なんといっても生徒・学生の皆さんです。本報告書は、そういった皆さんにも手に取っていただきたいと考え、作成しました。未来を担う若い方々が、自分たちの故郷について理解を深め、将来の針路を考えるきっかけとなれば、それほど嬉しいことはありません。
当委員会活動に際して、ご講演などにご協力を頂きました各方面の皆様に深くお礼を申し上げます。
最後になりますが、当委員会委員として貴重なご意見を下さった石黒直文氏、野口秀夫氏、山本信彦氏が、誠に残念ながら本報告書の完成をみることなくご逝去されました。心からご冥福をお祈り申し上げます。